博子先生の労務の教室

年次有給休暇とは   ( 2012.01.13 )

労働者は法律の要件が満たされた時法律上当然に有休休暇の「権利」を取得します。使用者はこれを与える「義務」を負います。

法律の支給要件とは以下の2点です。

  1. 1年間の(入社初年度は6カ月)の勤続勤務
  2. 1年間の(入社初年度は6カ月)の出勤日数が全労働日の8割以上

「労働者」とは正社員、アルバイト・パートの区別はなく「有給休暇は正社員のみ」等の取り扱いは違法になります。

ただし、週の所定労働日数が4日以下の労働者については5日以上の労働者とはことなる付与日数が以下のように定められています。

週所定
労働日数
1年間の所定
労働日数
勤続年数
6ヵ月 1年
6ヵ月
2年
6ヵ月
3年
6ヵ月
4年
6ヵ月
5年
6ヵ月
6年
6ヵ月
以上
4日
169~216日
7日
8日
9日
10日
12日
13日
15日
3日
121~168日
5日
6日
6日
8日
9日
10日
11日
2日
73~120日
3日
4日
4日
5日
6日
6日
7日
1日
48~72日
1日
2日
2日
2日
3日
3日
3日

所定労働日数が5日以上(1日の所定労働時間の長さは関係ありません)のパートさんや週の所定労働時間が30時間以上のパートさんは一般の労働者の付与日数を与える事になっています。

ときおり「辞める人間になぜ有休休暇をあげなくてならないのだ?!」との嘆きを経営者様から伺いますが、有給休暇は過去の労働により発生した労働者の権利ですので請求されたら拒否できません。

労務トラブルの原因にもなりやすい有給休暇。以下にいろいろなケースで見てゆきましょう。

ケース1  付与日数まちがい??

労働者Aさんは入社5年目(4年6カ月)。3年目に全労働日の8割出勤できませんでした。よって4年目は新しく年次有休休暇は発生しませんでした。4年目は8割以上出勤しましたので5年目は4年目(3年6カ月)の日数(14日)を付与しました。間違いでしょうか?

・・・・・間違っています。付与日数は入社からの日数により決定されます。間に8割未満の年度があっても関係ありません。4年目8割以上の出勤でAさんの年次有給休暇は5年目(4年6カ月)の16日を付与しなければなりません。

ケース2 年次有休休暇前貸しはOK?

・・・・・ダメです。年次有休休暇を前貸しして翌年分からその日数を差し引くのは当該年度に法定の付与日数を与えていないことになり違法です。しかし、法定付与日数以上の日数に関して前貸しをすることは可能です。

ケース3 年次有休休暇を申請して来た日に必ず与えなくてはならない?

・・・・・年次有給休暇は原則請求された時季に与えなくてはなりません。しかし使用者は請求時季に付与することが事業の正常な運営を妨げる場合にかぎり、他の時季に変更することができます。

また、年次有休休暇のうち5日をこえる日数について労使協定により計画的に付与する事が出来ます。ただし退職することが決まっている労働者に退職後を付与日とするような計画付与はできません。労働の義務のない日について年次有休休暇は請求も付与もできないからです。

ケース4 年次有休休暇を会社の許可制にしてもいい?

・・・・・使用者・上司の許可がないと年次有休休暇が認められないのは違法です。また年次有休休暇取得の理由の報告を求め、理由次第で取得を認めないこともいけません。「年次有給休暇請求に労働者が理由を申し出る必要はない」との判例もあります。

ケース5 欠勤当日や欠勤後に年次有休休暇取得の請求があったら拒否できる?

・・・・・年次有休休暇の指定する時季は、使用者が時季変更権を行使できる時間的余裕をもってなされる必要があります。よって欠勤当日や後日の請求に応じる必要はないと考えられます。なお、当日請求等に応じることは差し支えありません。

ケース6 年次有休休暇は請求日の半年前にする事とさだめてよいか?

・・・・・これはケース5とも関係してきますが、年次有休休暇の請求をいつまでに行うべきかの規定は労働基準法にはありません。しかし社会通念上、極端に前もって請求させる事は問題があります。最長でも「次シフト決定前までに」「次賃金期間の始まる前に」等の取り決めが良いのではないでしょうか?

ケース7 産休や育児休業中に年次有休休暇はとれる?

・・・・・産休や育児休業中に年次有休休暇を与えなければならないか否かは、その期間に労働義務があるか否かで判断します。

産休については産前の本人が休業を請求していない期間や産後6週間を経過して本人が請求し医師の支障がないと認めた期間は労働する事が出来ます。しかしそれ以外の産休の期間については労働出来ないので労働義務はありません。よって労働義務を免除される年次有給休暇は請求・付与できません。

育児休業は本人の請求により労働者が1歳に満たない子(特別の場合は1歳6カ月)を養育するために休業できるもので、請求すればその期間に労働義務はありません。よって育児休業を請求した後にその期間に年次有給休暇は請求できませんし、会社は請求を拒否する事が出来ます。

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